暑い中での吹きガラスの仕事、長袖と半袖、どっちがいいのだろう?

タイトルどおりの事であるが、今年は長年の疑問を、実験してみたので書いておきたい。

が、その前に、ちょっと「汗」とか、「汗臭い」とか、「汗びっしょり」とか、苦手なんだよ~、なんかうっとうしいし、という方や、ご飯前の方は、ご遠慮願いたい。もちろんご飯中の方は言わずもがな。

毎年夏に吹きガラスの仕事をしていて、長袖と、半袖とどっちで仕事したほうが、楽なのか悩んできた。
今までは、ずっと半袖派だったのだが、土木関係の知人と呑んだ時、長袖のほうが夜、身体が楽だ。というので、一回長袖で仕事してみようかな。と思っていた。

で、やっと今年やってみた。

今年の夏、鹿児島は一ヶ月以上晴れの日が続き、毎日死ぬほど暑かったので、この実験には最適だったと言える。

とにかく吹きガラスの工房は暑い。夏は特に!当たり前だが。

工房内の中央の柱に下げた温度計は、平均して外気温より10度ほど高い。だから夏は常にかるく40度超えである。
窯の前に行くとさらに強烈な輻射熱にさらされ、うう、となる。

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吹きガラスの工房は、どこもこんなもんだろうが、ウチは作業用と、ガラス熔かし用に別々にバーナーを焚いているので、一本で兼用している所よりは暑いと思うが、夏に火を焚いたら1本も2本も暑いに決まっている。

そこで、服装に工夫をしてみて、今迄、上半身ハダカ、とか、下半身半ズボンとか、素材が麻とか、オーガニックとか、乾きの早い新素材Tシャツとか、いろいろやってきた。

が、しかし、何やっても暑いですな。

で、半ばあきらめていたのだが、上記の「長袖は夜、楽」の話を聞いて最後の望みが出て来たのですね。

「ひょっとして」  と思うじゃないですか。「ひょっとしたら少しは楽になるかもしれない」と。

で、まあやってみた訳ですよ。今年の夏。

さて、手っ取り早く、結論から申すに、「楽にはならなかったけど、長袖のほうがイイ」

なぜなら、

メリット1, 人が来ても普通に会える。
メリット2,汗をかく量が若干、少なくなったような(気がする)
めりっと3、Tシャッツのお匂いが、若干・・少なくなった・・・ような(きがする)

決定的なものではありませんが、説明しましょう。

吹きガラス工房はとにかく汗をかく。そして、その汗が直ちに乾く。
強烈な窯の輻射熱と、あまりに暑いので、熱風を吹き出す熱風乾燥機と化した扇風機のおかげだ。
そして暑いので、また汗をかく。
そしてまた乾く。
この繰り返しで、露出している首や、腕に白い塩が析出され、なめると、塩分補給になる。

塩なら良いが、Tシャツは汗を吸い込み乾く。
汗をかき、その汗を吸い込み乾くを繰り返すうち、芳香剤のエキス(汗臭さ、ともいう)を溜め込み、そしてエキスが染み込むのである。

結果どうなるか、というと、恐ろしい事に、洗濯したくらいでは容易に取れない、「お父さんTシャッツ」の出来上がり1丁で、鼻つまみものの出来上がりなのだ。

参考までにわざわざ言っておくと、この鼻つまみ強度は、強い順から、

新素材Tシャツ>オーガニックTシャツ>安もんのTシャツ、の順だった。

つまり、乾きやすい素材のほうが、より、匂いが蓄積されやすい、と。
(ま、なんでか?はわかりますよね。)

で、これは、今迄の半袖Tシャツのパターンだったわけだが、これが長袖だと、メリット2,3にあるように、少し低減できた(のではないか?)

なぜなら、長袖とはいえ、下にTシャツを着るので、服が二枚である。
仕事を始めると、下のTシャツは、びっしょりなるが、上があるので、容易には乾かない。だから一回びっしょりなると、それ以上汗をかきにくいようなのだ。

そして、乾かないから、芳香が積層的に蓄積されない。

そして、芳香が長袖の内に格納されるので、人に会っても匂いがストレートに伝わらない、だろうという、希望。
 
以上の理由で、今年はずっと長袖で仕事した。

夜に楽かどうかは、ちょっと分からない。暑さに体力を奪われて、ご飯を食べたら直ちに眠くなってしまうからだ。

炎天下に仕事する人が長袖が多いのもこれでわかった。
道路工事の旗振りの人も、大体厚着だし、大工さんも長袖が多い。
企業戦士もスーツを着込んで暑そうだと思っていたが、以上のようなメリットから、着ていたほうがよさそうである。クーラーの寒暖差にも強そうだし。

ガラス工房は、炎天の太陽こそ照りつけないが、窯が小さな太陽のようなものだから、長袖仕様のほうが良いのだろう。

昔、東京のガラス工場を見学した時、連帯窯の前で、一日中ガラスを巻き取り、プレス型に垂らす係の人が、厚着をして、顔もタオルを頭巾のように巻いて防御していたのも、照りつける熱から、身体を守るためだったのか、とやっと納得した。

しかし、結局のところ、長袖でもやはり暑いのはこたえる。
ご飯食べて眠いが、これだけはまだ暑いうちに書かねば、と書いた。

やれやれ。

プレスガラスはカットグラスにはない魅力があるのだ。

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光原社さんに出した冷茶グラスが好評なので、ネットショップ向けにも製作する。

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その際、カットグラスにはないプレスガラスの魅力。というものを考えてみた。

そしてガラスの柔らかい手触り。という点では、プレスガラスが勝ちだと思うので、商品説明で長々と書いてみた。
ご一読下されば幸いである。

グラスを冷凍しても大丈夫です。ただしビール入ったままはやめときましょう。

お問い合わせがありましたので、お知らせ致します。

Q. 耐熱ではないので急激な熱変化は避けるよう書かれておりますが、
その点で質問がございます。

私は普段微発泡のワインをよく飲みますが、グラスを冷凍庫でキンキンに冷やして飲んでおります。

このようにグラスを冷やすことは可能ですか?(S様)

A. グラスを冷凍庫で冷やす事は問題ございません。

私もよくコップを冷凍してビールを飲みます。

ただ、いけないのは、冷凍したコップに熱湯を入れる事です。割れない事もありますが、割れるほうが多いです。

鹿児島では、焼酎をお湯割りで飲みますので、氷を入れてロックで飲んでいて、次はお湯割り、と、お湯をドバッと入れて割った、と言う方がたまにいらっしゃいます。

工業製品のグラスは、このような荒っぽい使い方をしてもあまり割れないので、私のグラスも大丈夫だと思われる方もいらっしゃるのですが、私のグラスは工芸用のガラス生地を使っておりますので、一応ご注意として、耐熱ではないので急激な熱変化は避けて下さいとの説明を一文入れております。

ですので冷凍するだけなら大丈夫です。

ただし、薄いグラス、たとえば見た目がいかにも華奢な、足の細いワイングラスや、ごく薄く作られたビアグラスなどは、わずかな衝撃で、割れてしまう事がありますので、そのようなグラスを冷凍することは、絶対におやめください。

仮に冷凍庫の中で、割れたりすると、危険です。

薄いグラスは、冷凍せずに楽しみましょう。

ビアガーデンで、キンキンに凍らせたジョッキに入れたビールが出てきますが、あのジョッキは相当分厚いです。

あれくらいの厚みがあるから、冷凍して、キンキンに凍らせたジョッキで、荒っぽく「カンパーイ!」ができるのです。

それから、グラスに張り付いた氷を無理やりはがすとか、冷凍庫の壁に強くくっついたグラスを剥がし取るなど、物理的にむやみな事はお避けください。

ガラスは、比較的、外から叩かれる、などの衝撃には強いのですが、反面、内側からの衝撃、あるいは引っ張る力には弱いです。

(昔の、漁業用の浮き球がガラスで作られていた事を、思い出して下さい。
あれは、ガラスの、外からの衝撃に強く、かつ加工しやすく、内部を空洞に出来る、という利点を最大に利用した製品です。
そして、外からの力に強い、球体である、という点も、強さに貢献しています。)

(また、板ガラスを利用した作品を作るアーティストは、ガラスが引っ張る力に弱い事を利用し、板ガラスの端部をペンチでつかんで引っ張り取る事で、魅力的なエッジを作り、作品にしています。)

ビアジョッキの取っ手や、ワイングラスの脚部、あるいは、薄めに作られたグラスなどは、見た目どおり構造的に弱いので、もし、くっついた時は、ガラスの周りの氷ごと化石を掘るように剥がすなどして、丁寧に扱って下さい。

ついでながら、当然ご存じだとは思いますが、中に液体が入った状態で、凍らせると割れますので、ご注意下さい。

例外的に、ウオッカなどの、アルコール度数が高いお酒は、冷凍しても凍らないですが、ビールぐらいのアルコール度数の低いお酒は凍ってしまいます。

ビンのまま凍らせると、水は凍ると膨張しますので、冷凍庫の中で割れてしまいます。

私もうっかり、瓶ビールを早く冷たくしようとして、そのまま忘れてしまい、見事に冷凍庫の中で、割れてしまった事があります。

もちろん、水を瓶に入れて凍らせても、見事に割れます。

勇気のある方は、ガラス瓶に水を入れて実験してみてください。

水が凍りはじめてしばらくすると、瓶にヒビが入るのを見れます。

それはコワイ!という方は、ペットボトルに水を満タンに入れて凍らせて見て下さい。

一晩置けば膨張したペットボトルが出来上がります。

水はもちろん凍りますが、基本、アルコール度数の低いお酒は、水と同じように凍ります。

ですので、ビールが一番凍りやすく、次に、ワイン、日本酒といった順番でしょうか?
ビールが余ってもったいないから、と、グラスごと冷凍するのはやめましょう。

ワインは産地の違いにより、度数が変わり、度数が低いのもありますので、気をつけてください。

日本酒は冷凍庫の温度によるでしょうが、凍りにくく、みぞれ酒、という飲み方もありますね。

ウオッカは、寒いロシアで凍らないように度数を高くしたお酒を作ったのだ、という説がありますが、どうなんでしょう?

いずれにせよ、ガラスは急激な温度変化や、衝撃には弱い、という点に、ご留意いただき、ゆっくり、ゆるやかに、穏やかに、取り扱って下さればよろしいかと存じます。

長くなりましたが、以上の点をお心にお留めいただいて、ご存分に冷やしてお楽しみ下さい。

ぐい呑を凍らせて日本酒を呑んだり、ショットグラスを凍らせてウオッカを飲むのもいいですね。

(S様 お送りした最初のメールが送れずに返ってきました。メールアドレスの綴り違いと思われましたので、正しいアドレスを推定して送り直しましたが届いたでしょうか?お差し支えなければ私の以下のアドレスに直接メールを送って下されば幸いです。mori@morikoppu.com)