以前、吹きガラスのモールについて少し書いたけど、今日はその続き。
このみっつのコップ、モールのすじ模様がねじってあったり、まっすぐだったりするけど、皆さんはねじったのと、まっすぐなのと、どっちが好きですか?
実はそこのところが自分でも良くわからなくなってきたので比べて見るために、おんなじサイズで3パターンのモールコップを作ってみました。
写真が小さくてわかりにくいですね。
アップ写真を、まずは左のコップから。
これはねじっていないですね。そしてこのコップは口から1センチ程のところに段差がついています。
実はこの段差は、吹きガラスの技法の特徴を象徴しているんです。
吹きガラスは、パイプの先に熔けたガラスを巻いて作っていきます。
そして大抵の場合、一回巻くだけでは作りたい製品の量に足りないので、二回、ものによっては三回巻いて作りたい量を調節します。
このサイズのコップぐらいだと大抵二回巻きで、口元の段差はその二回目を巻いたアトがこのようになる訳ですね。
二回目を巻く時に、一回目に巻いたガラス生地が、口元にだいたい1センチくらい残るように巻くことで残る「巻きぎわ」、をデザインとして利用する訳で、吹きガラスではよく使う技法です。
では、巻き際を残さない普通のデザインで二回目を巻く場合は、一回目の生地にどれぐらいかぶせて、二回目を巻いたらいいのか?
最初の頃は何も考えずにただひたすら吹き棹を突っ込んで巻いてくるのですが、ある時「で、どこまで突っ込んで巻けばいいのか?」と、ふとギモンに思う訳です。
ギモンを抱えつつも、とりあえずは作らないといかんので、一生懸命作ります。作っているうちにギモンは頭の片隅に行ってしまうので、そのうち忘れてしまいます。
でもまた、ある時ふっ、とまたそのギモンが湧いてきてしばらく悩みます。
悩むけど正解は出て来ません。
これはお風呂のお湯に漂っている湯垢状のものをつかもうとするも、ふわっと逃げられて、それを2,3回やってるうちどっか行ってしまい、最後の仕上げにもう一回お湯につかると又同じ形状の湯垢がふわふわと目の前に浮かんでいる。
とゆうのと、かなり似てますね。
実はその答えは何年かやってるうち自然と、とけてしまうのですが、ここで手っ取り早く正解を言っちゃいます。
何のことはなく、「作るものによって突っ込む深さを変え」ればいいのです。
モールのすじ模様をまっすぐにしたければ、さっきのコップのように一回目の生地を残して、半分ぐらい突っ込んで二回目の生地を巻きます。
逆にちょっとねじったモールにしたい時は、ほぼ突っ込んで巻いてきます。一回目の生地が2,3ミリ残るくらいでしょうか。こんな感じに仕上がります。
これを更に突っ込んで、一回目の生地が完全にかぶるように巻いてくると、すごく細かくねじれたモールになります。
そして最後にこの段差がなく、まっすぐなモールのコップ。
このコップ、シンプルで簡単そうに見えますが、実はここの三つのコップの中で一番難しいです。
なぜならば、一個目のコップの段差がついている部分を、なんらかの道具で、切り取ってしまうことで、このように仕上げるからです。
割とムリヤリ切り取ります。
工場などではローレッジという専用の切り離す機械を使いますので、そんなに難しくはないのですが、これを人間が手でやろうとすると、かなり無理やりな事になって、作っている時は「えーいくそー!」と10回ぐらい言わないと良いのができません。
とゆう訳で、私はどのコップが好きなのかというと。
やはり苦労して作った最後のコップが好きです。
シンプルなとこもいいですもんね。