ポンテあとを削るための先端砥石(カーボランダムポイントというやつ)が無くなってきたので、いつもの歯科道具店に買いに行ったら事務所の中にTシャツがいっぱい飾ってある。
ひょっとして商売替えしたのでは?
と心配になって聞いてみると、今までどおり歯科道具も扱っているのだが、今度からTシャツも扱ってマルチ化を図っているのだそうだ。
歯科道具の専門店だから、市内の歯医者さんや歯科技工士さんたちの御用達で経営は堅いのだろうと思っていたら、安売りをする業者が市外から営業に来るので、なかなか厳しい状況らしい。
はたから見ると、いい仕事のようでも実際はいろいろとあるのは何の仕事でもそうなのだが、今の時代の極端な一極集中化と、安売りムーブメントには、専門的で見た目いささか安定的な会社でも漠然たる不安感を感じているのかな、と思った事である。
私の住んでいるこの市でもそうだが、個人商店が、まるでロウソクの火がひっそりと消えるようにシャッターを閉めたままにしてしまう姿を、珍しくもない事のように感じながら、ここ2,30年のところずっと見てきた。
閉まるたんびに、
「ごめんなさい、最近行ってなかったね」
と、心のなかで罪悪感を感じながら。
この流れがどこまで行くのか私にはわからないが、大型ディスカウントショップのムダに広い店内を、探しものを探しながらウロウロと歩くような買い物の仕方は、なんだかもう嫌になってきている。
それはバイキングで、なるべく美味そうなオカズを取ろうとウロウロするほど、オノレの浅ましさを自覚しないといけないシステムと、どこかで似ている。
別に欲しくはないのだけど、そこに取って下さいとばかりに並んでいるから、いちいち選ばないといけない煩わしさにうんざりする。
なんでも選んでいいような気前のいいシステムのように見えて実は、選択と給仕のサービスがお客の仕事になってしまっているのだ。
「おばちゃん!コロッケちょうだい」
「はーい!何個?」
「4個。」
別に、コロッケの中身がミンチだろうが、ポテトだろうがどうでもいいのだ。
おばちゃんが作るものならば。