吹きガラス窯での薪と炭の使い方。(いにしえのマエストロのように)

今年から吹きガラス窯で薪と炭を焚いているが、近ごろやっとパターンが決まってきたようだ。

最初の頃はやみくもに焚いて、ススとケムリが出るばかりで、ずいぶん無駄も多かったが、少しは賢くなった。

さて、まず、朝一番にダルマの底の灰をかき出し、窯前を掃除する。

そして、小ダルマに炭を1,2本投入。

次に、小ダルマのガスバーナを点火する。
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それから大ダルマに細めの薪を一本投入。余熱で窯内は十分熱いので、しばらくすると薪がくすぶりだす。

そのケムリは小ダルマに流れて、小ダルマ内できれいに燃焼してしまう。

大ダルマの薪が燃え尽きて熾き火になったら、次の薪を投入。またケムリを出して小ダルマ内で燃やす。

そうやって、繰り返し薪を燃やすうち、大ダルマ内では、大量の熾き火ができる。

その熾火を長い火箸でつかんで小ダルマに移動してまた燃やす。

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こういう感じの繰り返しで、ガスバーナーはごくごく絞っていても、小ダルマ内は高温を保つ事ができる。

熾き火は大量にできるので、小ダルマに入りきらない分は、ペール缶に入れて蓋をすれば酸素がなくなり、消し炭ができるので、それを家の火鉢で使用する。

このように、何というか、吹きガラスの仕事をしつつ、炭作りもできるというパターンが形成されつつあるのが、何かいい。

かっこ良く言えば、「カーボンニュートラル」な、炭素固定をやっているわけだ。

更に、このパターンでいくと、小ダルマ内がケムリが自燃するほど熱くなれば、ガスを止めても無煙炭焼き窯ができる。

温度が下がればまた適宜、小ダルマに大ダルマの熾き火を移動させればすむ話である。

これからの課題としては、ススの出やすい油分の多い杉や竹を入れすぎると、黒いススのケムリが出る事だ。

だが、逆に、このススを完全に燃やしきる事ができれば、
更なる薪ガラス炉の高温化が出来る筈だと思っている。

まあそういう訳で、薪を燃やしつつ、リサイクルグラスを熔かして、ルネッサンススタイルのワイングラスなど、作っていると、古(イニシエ)のマエストロになった気分で仕事ができて大変気分が良い。

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さて、ここからは、まあ宣伝だが、

このワイングラスは、ただ今開催中の、鹿児島市のシーズギャラリーで展示しているので、気に入っていただけたら、お買い求め下されば幸いである。

ワイングラスは肩が凝る。

吹きガラスをやっていて、肩やら腰を痛める人は多いようである。

特に一人で作る人は、無理をするせいか持病レベルで、腰痛、肩こりになるようだ。

特にワイングラス。あれの細脚のやつは飲むのも肩が凝るが、作ってみると更に肩が凝る。のみならず、腰にもくる。

そういう事で、あまり肩の凝らないワイングラスを考え中だ。

肩を凝らせたくないのなら、コップで飲めばいいではないか、とも思うが、それもよしだが、たまにちゃんとしたワイン、

酸化防止剤などが入っていないワインが手に入ると、宙に浮かせて、眺めながら楽しみたいものだ。

バロック時代のレーマー杯、ルネッサンス期のイタリアのグラスなどの古いものは、安定していながら気品をもっていて、よいデザインだと思う。

それに代わって、今のワイングラスの主流の、折れんばかりの細脚は、いったい、いつから出てきたのだろうと思う。

確かに、職人としては技術的に誇ってみたく、作ってみたいデザインかも知れないが、その細脚ワイングラスには似合わない、気さくで、美味しいワインもあるのだ。

そんなワインに合うグラスを作ってみたいものだ。

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木質ガスの燃焼。動画つき。

ようやく寒くなって吹きガラスの仕事も楽になってきた。

と思ったら、今日は蒸し暑くて小屋内は30度。夕方から雨が降りだす。

木質ガスの燃焼は水素ガスの燃焼が多いように思う。

動画を撮ってみた。

透明な炎でふわふわ燃えているのが、木質ガスの炎だ。

木質ガスだけでは温度が上がらないので、プロパンガスも、ごくごく絞って燃やしているが、赤い炎がプロパンガスの炭素が燃えている炎である。

ガラスを熔かすのには赤色の炎が良いという。(輝炎、というらしい)

つまり、炭素が燃えている状態がガラスの加工をしやすい炎という事だ。

ガスより、灯油、灯油より、重油が吹きガラスの作業はし易いというのも、炭素分が多いほうがガラスをよく熔かすということだ。

という事は、炭素がほとんどない、水素ガスの燃焼は吹きガラス向きでないという事になる。

まだまだ、課題が多いようである。

塩吹き男。

風呂に入ろうとアゴに手をやったら塩が出来ていた。

なんでアゴに塩が出来るのかというと吹きガラスをやっている人なら経験があると思う。

暑い時に吹きガラスをやると塩を吹くのだ。

吹くというか、正確にゆうとつまり、暑さでかいた汗が、窯の熱で水分が蒸発して、いつの間にか塩になる。

出来るのは大体、胸の谷間の上部、つまりTシャツからはみ出た部分に出来やすい。

一番汗がたまりやすい所で、ガラス窯の熱にさらされるので、汗がすぐ乾き、塩になるのだ。

さわるとザラザラするのですぐ分かる。

で、塩分補給のため、なめたりするのだが。

けっこうおいしい。

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それからアゴの先も塩を作りやすい。

ふつうアゴは先が下がっているので、汗がたまりやすいし、ヒゲが適当に伸びていると、水分が蒸発しやすくなるので、よく塩ができる。

特に長さが、3,4ミリの時が良いようだ。

また、塩吹き男。と書いたが、これが女、だと変に喜ぶ人がいるかもしれないので気を付けよう。

人間であれば誰にでも暑い時に塩は出来る事なのだが、潮吹き岩を見て大喜びする馬鹿もいるので。

全国いろいろあるが、山口県の竜宮の潮吹き岩が私は特に面白かった。

 

 

 

 

風向さんの展示会も、台風19号スズメバチ君も秋風に吹かれて。

台風19号、通称ヴォンフォンことスズメバチ君も何事もなく、過ぎ去ってくれた。

一時、900hpaまで、気圧が下がり、かなりな被害を覚悟したが、なんち事はなく、東シナ海、海上でまさしく雲散霧消してしまったようで、鹿児島の枕崎に上陸した時、こちらはそよ風ほどの風しか吹かなかった。

むしろ、沖縄あたりにいる時のほうが風が強かったという、変な台風であった。

多分、秋風がだいぶ涼しくなっていたので、秋風を吸い込んで、やる気を無くしたのだろう。

秋というのはそのように、人も台風も、静かにさせるものであろうか。

なんか思いつきで書いてるだけだが。

さて、福岡の風向さんでの展示会も中盤を過ぎました。

風向さんが、いろいろと写真を上げてくださっているので、見てください。

「工藝風向」

出来れば行ったほうがいいですね。

風向さん、ガラスの写真がかなり上手く、現物と、どっちがいいかと尋ねられると返事に窮します。

そのへんを確認する為にも、ぜひ行って下さい。

今回の展示会は、いつの間にか、「静か」さが通奏低音のようになっています。

思えば、生まれて初めてクマ素で展示会をした時、「森永君のガラスは静かなガラスである・・・」と紹介されましたが、本人としてはずいぶん、違和感を感じたものです。

なにせ、作っている時は、目を三角にし、息をゼイゼイゆわせながら、鬼のように作っているのです。

何人とも不用意に近づいたらいかんぞ、オーラを発しながら。

それで、出来たものが静けさを漂わせているとは、本人は大変、気抜けしたものです。

戦いの果ての静かさであるか。

と、納得したのではありますが。

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昔はいい時代ではあったが「〇〇が欲しいのですが・・・・」というと、オレに聞け!みたいなオヤジが出てきて、「なんにするんだ!」と聞かれ

気がつくと、萩の白い花が散り始めている。
不思議に咲くのも散るのも静かな花で、昔の日本人はそんなところを秋の花として愛したのだろう。

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今はコスモスが秋の花になってしまったが、花札にはできないな。

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さて、今日は少し時間があったので、買っといた小型ファンの結線をして、使えるようにする。

薪炭ガラス窯はエアを強制的に入れた方が温度が上がるようなので、流量の大きなACファンをオークションで手に入れといたのだ。

一つはカタツムリ型のシロッコファン、もひとつはふつうのACファンだ。

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近ごろは、こういうパーツがネットで手に入れられるようになって、わたしみたいな、自分でやるぜ派にはいい時代になったもんだ。
その他の政治経済とかは近未来的な退廃的崩壊状態だがそこがまた近未来的ではある。

昔はいい時代ではあったが、私の少年の頃はホームセンターすらなく、こういうコマい部品を買うのにも、地元の業者しか入らないコアな卸売専門業者に覚悟を決めて入り、「〇〇が欲しいのですが・・・・」というと、オレに聞け!みたいなオヤジが出てきて、「なんにするんだ!」と聞かれて、いや、あんたに言ってもわからんだろ、オレみたいな非常識な使い方、とも言えず、適当な分かりやすい言い訳をしつつ買うのが苦痛だった。値段も、最後におっさんが分厚いカタログをめくって調べるまでわからんし、結局以外に安かったりするのだが、とにかく手に入れるまでの過程が大変だった。

だからパソコンの画面で、値段と寸法を確認しながら買える、というのは、もう、理想的なのですね。
その分、余計なものまで買ったりするが。

そういう事で、すぐに、強制ファン、つまり薪、炭用の電気フイゴがすぐにできてしまった。

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さてさて、シロッコファンと、普通のACファンを並べて、風量実験してみよう。

以外な事にシロッコファンはその、いかにも大風量があります!という外見からは期待ハズレな風量であった。

普通のACファンのほうが、少し、風量体積は勝ってるのではないかと思う。

ただ、シロッコファンのほうが、風が絞られてて吹いてくるのはいいのだが。

あとは、明日、実際に焚いて実験するしかあるまい。

シロッコファンのほうが高かったんだがな。

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20度くらいが窯の火が、ありがたくなる境目のようですね。いい季節になりました。

某月某日、とうとう工房の温度が30度を切った。

朝など寒くて、夏の間は近寄りたくもなかった窯の火に手をかざしてしばらくじっとしていた。

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ほんのそこら10度ぐらいの温度差なのに、人は暑い寒いとめんどくさいことである。

これから寒くなってくると吹きガラスの仕事は暖かくて最高の季節だ。

特に冷たいみぞれ混じりの雨の日は最高である。

今年から薪を焚いて作り出したので、焚き火をしながらガラスを作れるという、焚き火好きの私にとっては更に楽しみな季節になる。

早く冷たい雨の日が来ないかな。

吹きガラスは化学反応を起こしながら作っているのだ!カリガラスへの挑戦なのだ。

もう彼岸も過ぎたから、これでやっと鹿児島も涼しくなったと余裕で仕事してたら、いやなんか暑くないか?と温度計見たら40度越えてて熱中症になりそうになった。

エムズギャラリーの個展も無事に終わって、少し気が抜けたが、次があるので、やっぱりずっと作っている。

相変わらず炭と薪とガスで焚いているのだが、だんだんコツもわかってきて快調である。

M'sギャラリーのK矢さんが、今回出したコップを触って「ツヤツヤしてますね〜」

とおっしゃっていたが、自分でも「なんか今までと違うなー」と思っていたので、人に気付いてもらえると嬉しい。

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表面にもう一枚、膜があるような、感じがするくらいツヤツヤしており、手触りもなんか柔らかい。

多分これは想像だが、薪を焚いていて、薪に含まれるカリ成分が、ガラスと反応し、表面が釉薬がかかったような状態になっているのではないか、と思う。

ボヘミアガラスが、カリガラスの代表だが、カリガラスというガラスは、ソーダガラスや、鉛ガラスと比べ、融点が高く、キラキラしているのが特徴である。

昔見たことのあるカリガラスに、今回の薪ガラスは似た光り方をするように思う。

1000度を超える温度で、作っているのだから、そのような化学反応が起きていてもおかしくはないと、思うのだが。

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ガラスという、不思議に透明な器が生まれた事の不思議もあるのだが、 今回は、薪と炭を使った吹きガラスを始めてしまった事による、燃焼の不思議の、訳のわからなさがメインの気持ちだ。

KTSさんの取材の補足を書いたが、もう一つ、今回のエムズギャラリーさんの展示会で説明しておきたい事があったのだった。

エムズギャラリーさんの葉書に、

「ガラスの謎に改めてとらわれてしまった。

シルクロードを渡ってきたグラスを、しげしげと眺め続けた人のように、

本当にわからない事だらけになってしまった。」

と書いたが、

ガラスという、不思議に透明な器が生まれた事の不思議もあるのだが、

今回は、薪と炭を使った吹きガラスを始めてしまった事による、燃焼の不思議の、訳のわからなさがメインの気持ちだ。

 

なぜ炭は炭素の固まりなのか、

木が炭素の固まりになる過程で、失われる木質ガスはどれほどのエネルギーなのか、

燃焼の為の空気は入れれば入れるほどいいのか、

それとも空気を入れず、強還元状態のほうが、ガラスはよく焼けるのか、

赤い炎と、白い炎のどっちがガラスの芯まで焼けるのか?

と、いう具合に、ギモンが次から次へと浮かんできて、もうすべてが訳わからなくなってしまった、

と、言う事を今回の葉書では言いたかったのである。

会場にいて、説明できたら良いのだが、今回は窯に火が入っているので、ギャラリーに詰められず、その辺の説明ができないので、ここで説明しておきます。

しかし!

訳が分からないが、確実に判る強みを吹きガラスという仕事はもっている事に気付いた。

吹きガラスの作業をしていて、棹の先のガラスをあぶっている手応えで、窯の状態を感じる事ができるのだ。

「あ、これはもう(ガラスが)柔らかくなってきているな!」

という手応えは、棹を回している力ぐあいで指先が微妙に判断できるのである。

つまり、吹きガラスという仕事は、窯の状態が判断できるゼーゲルコーンを棹の先に常につけている、

という常時、ゼーゲルコーン状態である。という事だ。

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これはつまり、

訳のわからん窯の状態を、

常に判断できるセンサーをもっているという事になる。

これは、すごい事ではないのか?

訳のわからん窯の燃焼状態を指先で判断できる!

という事なのだ。

 

むうー、すごおい事に気付いたのだが眠いのでこのへんで今日は終わり。

 
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