秋を待つ心。

ゆうべ少し寒かったので、薪ストーブを点けた。

5月に火を点けたのは初めてではないだろうか。

この調子で、秋になってくれたらいいのだが、そんな事はない。暑い夏が今から来るのだ。

秋を待ちわびる心が、山本周五郎の「晩秋」という短編の一節に惹かれたので、引いてみる。

「花を咲かせた草も、実を結んだ樹々も枯れて、一年の営みを終えた幹や枝は裸になり、ひっそりとながい冬の眠りに入ろうとしている、自然の移り変わりのなかでも、晩秋という季節のしずかな美しさはかくべつだな」

(山本周五郎 「晩秋」より  〜文庫「町奉行日記」に収録)

藩の基礎を固めるため、苛斂な専制政治を行った藩老職の進藤主計という人物が、独身を貫いた人生の最後に、自らを剔抉し、断罪するための調書を書き上げた後の言葉だけに深く沁みる。

この言葉を胸に過酷な夏を乗り切りたいものである。

    

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