急いでいる方のために結論から言っておきます。
煙を出さずに燃やすにはとにかく乾燥させること。
それだけです。
野焼きなどで、もくもくと上がるあの煙の原因は、水分です。
一見乾いているように見える草刈りのあとの、数日たった枯れ草でも、まだ水分はだいぶ残っています。
ですから、野焼きすると、もうもうと煙が上がるのです。
2年ほど、軒下で十分に乾燥させた薪なら、ほとんど煙は出ません。
それでも少しは出る煙を、全くと言っていいくらい出なくするのには、以下に申し上げる方法がある。ということなのです。
つまり、ロケットストーブやTLUDストーブ(Top-Lit Up-Draft Stove)、あるいは出た煙をもう一度バーナーで燃やす方法などです。
煙を出したくなければ、燃やす前に乾燥させる時間がどうしても必要なのです。これはいかんともしがたい事実です。
しかし、今のこの初冬の時期、枯れ葉や、剪定した大量の枝葉などをじゃまくさいので、とっとと燃やしたい。
という方もいらっしゃるでしょう。
「うちら田舎じゃけん、煙なんどで文句いう人はおらせんだら!」
(えっと何弁だっけ?)
という方は、まあいいとして。
比較的、人家があるのに、
「多少の煙はやむなし!今日日曜なので、今日やりたいんじゃ!煙がなんぼのもんじゃい!文句あるんなら・・・、ヤキイモあげようか。」
と実は、ご近所に気を使う方は、
とりあえず穴を掘って燃やしましょう!
穴を掘って燃やすのは、TLUDストーブの原理に近い燃やし方で、
素焼き、
(えっとつまり、そのまま地べたで燃やす。ということですね。なんだっけ?直焼き?あるいは、ふつうの焚き火?)
に比べると、煙を少なくできます。
と、ここまで読まれて、急いでいる方は、以下長いので、読まずにすぐ穴掘りを始めてください。
TLUDストーブってなんぞや?
とか、うんちくはまあ、あとでついてきますので。
うんちくを読んでいたら、日が暮れてしまいます。
日没後、暇だったら、ひとっ風呂浴びて、心地よい疲れとともにビールでも飲みながらまた読んでいただけると、私としては望外の喜びです。
さて、ではお暇な方は以下おつきあい下さい。
TLUDストーブってなんぞや?
Top-Lit Up-Draft
つまり、
上(トップ)に(火を)灯けて、上昇気流を起こす。(空気を上に引く)燃やし方です。
ウッドガスストーブ、キャンプストーブなどの、商品タイトルで、市販されていますし、自作することもできます。
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燃焼物の、上に点火し、燃やしていくことで、周囲あるいは下部から、燃焼のための空気を取り込み、強い上昇気流を起こし、それにより、火が強まれば強まるほど良く燃えるサイクルを生み出すという原理です。
火が強まり、強い上昇気流が起きると、さらに燃焼のための空気が取り込まれやすくなり、上昇した木質ガスが、周囲の空気と混合し燃焼する、いわば二次燃焼に近い現象が起き出します。
こうなるとこっちのもので、多少煙が出ても、炎のトップ部で、燃やし切ってしまいます。
すばらしい!
で、フツーの焚き火とどうちがうねん?
ごもっとも、どっちも同じ野外火で、同じように感じます。
が!
普通、焚き火をする時は、じょじょに燃やしていきます。
まず、新聞紙を丸めて、その上に細い枝葉をのせ、その上に少し太めの枝をのせ、それから下のほうに点火します。
火が大きくなってきたら、太い枝や、割った薪を入れて火を安定させていきます。
つまり、焚き火は下から点火するのです。
そうして燃えるうち、当然焚き火でも上昇気流は起きます。
ところが、上昇気流とともに燃えている炎の状態、というか内容がTLUDと焚き火では、じゃっかん、違います。
TLUDは上が燃えていて、下部は冷たいままです。
ところが、焚き火は上も熱いが、下も熱いです。
これにより、TLUDストーブは、すぐに燃えやすい、木の燃焼ガス(水素が混ざっている)から先に燃え、木の内部の炭素(つまり炭になる部分)はあとから、ゆっくり燃えてきます。
しかし、焚き火は、上も下も燃えていますので、木全体の成分が、同時に燃えている状態です。
木質ガスも、炭素も、炭になっている熾火も、そして、水分も、水蒸気も、全部同時に炎の中にあるのです。
ですから、煙が出やすい。
TLUDストーブの燃焼は、上が燃えつつ、だんだん下に移って燃えていくので、燃えているのは木質ガスが多いです。木質ガスが燃えきると、熾火、つまり、炭素、ようするに炭だけが残ります。
これに、土をかけるなり、密閉容器に入れるなり、あるいは水をかけてしまえば、簡易炭が出来上がります。
焚き火は、炭素も同時に燃えますので、水をかけても、残った木と、少しの炭しか残りません。あと灰ですね。
こう書くと、焚き火と、TLUDストーブ、だいぶ違いますね。
私も書いていて、びっくりしました。
さて、そういう事で、なるべく煙を出さずに燃やしたい方は、穴を掘って燃やして下さい。
穴の内壁が、火を断熱し、かつ、熱を反射しますので、よく燃えるはずです。
凝るのであれば、「ダコタホール」といって、空気取り入れ用の穴をもう一個、隣に掘って底のほうでつなげると、さらによく燃えるようです。
Dakota Fire Hole WiKi ダコタファイヤホール ウィキペディア
まあ、そこまでしなくても、火が強くなってきたら、「ボッ!ボッ!」と、炎の脈動が起きて、穴の周辺部から、空気を取り込み、二次燃焼現象も起きてきます。
炭を取りたい方は、ダコタホールより、こっちの「ただの穴」ほうがいいです。
ダコタホールは燃焼の為の空気を取り込んで、よく燃えるので、熾火が灰化してしまい、炭として残らなくなってしまいます。
商品的に、無煙炭化器なるものも、モキ製作所さんから、販売されています。
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より、かっこよく燃やしたい方は、買ってみられてもいいのではないでしょうか?
穴を掘らなくてもよさそうですし。
ステンレスなので、サビて朽ちる心配もないし、熱の反射も土よりは良いのではないでしょうか?
私も欲しいところですが。どうしよう。
(と、以上、2020年11月29日に、従来の記事に、追記しました。
普通は、追記は、あとに書くものですが、以下に来る従来の記事の前フリが長すぎて、急いでいる人は困るだろうと思い、結論から申し上げる事にしました。
前の記事に手を入れようかとも思いましたが、これはこれで残しておくことにします。
暇な人は読んで下さい。)
前回、煙事件の事を書いたが、
あれから煙について、また考えてみた。
世の中には一定数、煙の好きな人もいるし、煙の嫌いな人もいるという事。
これはご理解頂けるかと思う。
が、
また世の中には、一定数、異常に煙の好きな人(私の事だ)と、
煙は好きだが、煙の種類による人(例えば、タバコの煙は好きだが、焚き火の煙は嫌いな人、など。)
や、
異常に煙の匂いが嫌いな人。(洗濯物に煙の匂いが着くのがいや。という人は一定数いて、薪ストーブの煙クレームの発生問題はたまに聞く。薪ストーブ会社の人はこの問題の事は何も言わないが、要は日本が狭すぎるのだろうアメリカなどと比べて)
など、いろんな人がいる。
ま、つまり、煙が好きか嫌いかは、顔を見ただけではわからない。という事である。
意外と煙好きそうな顔をしているくせに、煙が苦手である。というやっかいな人もいるので気をつけよう。
こうなると新興宗教のようで、顔が煙好きそうだと、うっかり煙勧誘など始め出してびっくりされてしまい、しまった事になるやもしれぬ。(いや、私はやらないが・・・)
まあつまりは誰も居ない所でやるのが一番なのだろう。
”やる”などと言うと悪事のようだが、焚き火や野焼きなどは別に法律上、禁止されている訳ではない。
(2018年12月5日追記〜 条例上、ダメな地域はあるだろう。また、廃棄物、ゴミを燃やすのは法律上でもダメである。
最近この記事の閲覧が多いので、念の為、追記しておくが、結局、住んでいる場所や、燃やし方の状況次第、という事になる。とにかく、見た目明らかなゴミを燃やすのは法律違反である。
もちろんプラなどを燃やすのはいけないが木や草などを(畑仕事などの業務上)燃やすのは別にかまわない。
ただ、住宅地などで近所が近いと個人的トラブルが起きやすい、という事である。
そこで煙について私が認識を深めた本を紹介しておこう。
小型焼却炉についての本である。ごみ焼却炉の話なのだが、燃焼について、実にツボをつく記述があり、個人的にとても面白かった。
特に、「第3章 煙の出ない燃焼条件」中、なぜ、黒煙が発生するか?という記述は目からウロコだった。
要約すると、可燃性ガス中の、早く燃えやすい水素だけが燃えてしまい、あとに残った炭素が、黒煙になる。という事なのだが、なるほど、全ての燃焼物は基本、炭素と、水素の化合物なので、その結合が切れて水素だけ燃え、あとに炭素が残るという図式は、とてもわかりやすい。
そうなると、燃焼物により、ススの出かたが違うのは、それぞれの化学結合状態の違いによるのだ、と理解できる。
ちなみに、煙を出さないように燃やすには、
- 空気とよく混合させること。空気とよく混合していない火炎は、長くなり、結果火炎面が放射冷却され、燃えやすい水素が先に燃えて黒煙が発生しやすくなる。
- 燃焼室内温度を高くキープする事。燃焼温度の変動が激しい時は、補助バーナーを使って、燃焼室温度を一定にする。おおむね800度以上だと、煙の発生がない。
- 燃焼ガスと空気が一定時間、炉内に滞留すると煙の発生が見られなくなる。800度で、2秒程必要。
- 以上3点であるが、これらは相互に関連している点に留意。
(小型焼却炉 三好康彦著より要約)
炉内温度が800度というのはかなり高いので、普通の薪ストーブなどの燃焼ではありえないが(真っ赤になるだろう)補助バーナー使用だと、ごみ焼却炉でもこれくらいの温度に上がるらしい。
ダイオキシンの発生が200度から500度で、800度になると出ないらしいから、ごみ焼却炉では常に補助バーナーを使っているのだろう。
さらに排煙もアフターバーナーで燃やして煙が出ないようにしている筈だ。
さて、しかし、ふつうの焚き火で補助バーナーを使う人はいないだろうから、こんな高温度は無理である。
やはり焚き火で煙を出さないようにするには、
- 焚き火の温度を下げないよう、できるだけ乾燥した薪を使う。
- 火を囲って温度を上げる。
- 空気の流入を多くするため、ロケットストーブや、TLUDストーブなどのしくみをうまく取り込む。
といったところでしょうか。
しかし、よく乾燥した木だけを燃やすなんて都合のいい焚き火は、雨の多い日本の気候では、むずかしい。
キャンプなどの焚き火と違って、畑とかで燃やしたいものは、枝葉や、枯れ草などのかさばるもので、キャンプのように薪を燃やしてくつろぐ時とは、焚き火の性質が違うのだ。
そして、刈った草や、落ち葉など、水分が残ったものを、燃やすことが多いので、水蒸気を含んだ白い煙がもうもうと出て、大変な事のように見えるのが困るのだ。
(余談ですが、発泡スチロールを燃やすと、大量の黒煙が出ますが、あれは炭素だけで、全くの無害だそうです。あの黒煙は、見た目すごく悪そうですが、塩素を含んでいないので、ダイオキシンは発生しないそうです。)
煙のもとは水分、もしくは水分を含んでいるので、燃えにくくなって、いぶる煙が出るのである。
(ただし、発泡スチロールや、ゴム、プラスティックなどの燃焼時の、黒煙は別。こちらは、単に酸素不足と、燃焼温度不足。)
という事は、野焼きなどで、もうもうと上がる煙は、ほとんど水分なので、キッチリ乾燥させてから、燃やせば煙が少なくなる筈である。
しかし白い煙が出ないよう、刈った草や、落ち葉を乾燥させるために、わざわざ屋根付きの薪小屋みたいなものを作る訳にもいくまい。
そこで思うに、ドラム缶に、まず、枝葉や、枯れ草をつめておき、晴天下で、数日さらして乾燥させてから燃やすというのはどうだろう?
これなら、最初は煙が出るだろうが、温度が上がってくればほとんど煙は出ないのではないだろうか。
モキ製作所の焚き火どんどんという、焼却炉が、ネットでよく見るが、これは、燃焼温度が高いようなので、こういうのに詰めて乾燥させてから、焼いたらさらに煙は出にくいだろう。
小さいのもあるようだ。
焚き火どんどんについて、ネットで調べてみたが、このサイトが詳しいようだった。
撃退百貨店
Q&Aがあったが、やはり「雑草、生木は煙るので、乾かしてから燃やして下さい。」とあった。
お金をかけたくないのなら、やはり、自作しかない。
今は、ネットのおかげで、いろんな自作派の方々の記事が出て来るので、大変ありがたい。
昔のようにドラム缶に穴を開けただけでなく、二次燃焼のしくみを使ったウッドガスストーブ、TLUD(トップリットアップドラフト)が、無炎燃焼に向いているようだ。
原理は、このキャンプ用の小枝ストーブ、ソロストーブがわかりやすい。
友人が使っていて。面白いのでそのうち買おうかな、と思いつつ、結局まだ買っていない。
(最後に〜 2018年12月5日追記
この記事を書いてから、4年近く経つが、冒頭でも追記したように、最近この記事のアクセスが多い。
皆さん「煙のでない燃やし方。」で悩んでいらっしゃるようだ。
誤解をまねかないよう、煙と、炎について、私の考えと、立ち位置を言っておこうと思う。
荒野の中で、煙を出すのなら、問題はないだろうが、結局、まわりに人がいるから、その密度によって、問題が起きるのである。
ところが逆に、人の密度が多くても、どんど焼き、や、鬼火焚き。農業や、林業仕事での野焼きなどであれば、堂々と、煙を出せる訳で、こちらは周りに人がいても問題ない。
しかし、そのような行事や、共同作業は、今の時代だんだん少なくなって来ている。
地方の高齢化、人口減(過疎とも言う、変な言葉だが。疎が過ぎるとは、どういう意味だ?)
のせいである。
そして逆に、都市部の人の密度は高くなって来ており、そういう所での煙のトラブルは多い。薪ストーブの煙苦情などである。
もちろん鬼火焚きなど出来るはずもない。
人の密度が高くても、煙に文句言われる場合と、文句言われない場合があるというのが面白い。
また、少子高齢化と、地方の人口減が進むほど、煙と、炎が人間の生活の周りから、減っていくというのも、何かの符号のようで面白い。
炎と、煙を駆逐していくようでは、生活はますます、息苦しくなっていくだろう。
そして、炎と、煙のありがたみを知らない人間が増え、ますます炎と煙は遠ざけられていく。
(炎は、ともかく、煙にありがたみがあるのか?と思うが、煙をくゆらせてくつろいだり、煙を肉に当てて、燻製に出来るありがたみがあるのだった。)
少子高齢化というが、20年前に、ちょっとした何らかの手を打っておけば、今頃は、その子らが税金を収め始めているのだ。
いや、16になれば、バイクに乗ったり、タバコを吸ってくれるので、ガソリン税や、たばこ税を収めてくれる。
いやいや、自分で、お買い物に行ける年になれば、小遣いから、消費税を払ってくれるではないか。
そんな簡単なフックも起こさずに、自分の知り合いと、アメリカにお金をばらまくしか能のない、無為無策のマスターはほっといて、私は少々、迂遠ではあるが、炎と、煙のありがたみをボディに伝えていく事で、地方の人口減と、少子高齢化の流れに逆らっていけるのではないかとバカバカしくも考えているのである。
「風が吹けば桶屋が儲かる」の伝ではあるが、無為無策よりはましだろうと思う。)