ワイングラスは肩が凝る。

吹きガラスをやっていて、肩やら腰を痛める人は多いようである。

特に一人で作る人は、無理をするせいか持病レベルで、腰痛、肩こりになるようだ。

特にワイングラス。あれの細脚のやつは飲むのも肩が凝るが、作ってみると更に肩が凝る。のみならず、腰にもくる。

そういう事で、あまり肩の凝らないワイングラスを考え中だ。

肩を凝らせたくないのなら、コップで飲めばいいではないか、とも思うが、それもよしだが、たまにちゃんとしたワイン、

酸化防止剤などが入っていないワインが手に入ると、宙に浮かせて、眺めながら楽しみたいものだ。

バロック時代のレーマー杯、ルネッサンス期のイタリアのグラスなどの古いものは、安定していながら気品をもっていて、よいデザインだと思う。

それに代わって、今のワイングラスの主流の、折れんばかりの細脚は、いったい、いつから出てきたのだろうと思う。

確かに、職人としては技術的に誇ってみたく、作ってみたいデザインかも知れないが、その細脚ワイングラスには似合わない、気さくで、美味しいワインもあるのだ。

そんなワインに合うグラスを作ってみたいものだ。

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塩吹き男。

風呂に入ろうとアゴに手をやったら塩が出来ていた。

なんでアゴに塩が出来るのかというと吹きガラスをやっている人なら経験があると思う。

暑い時に吹きガラスをやると塩を吹くのだ。

吹くというか、正確にゆうとつまり、暑さでかいた汗が、窯の熱で水分が蒸発して、いつの間にか塩になる。

出来るのは大体、胸の谷間の上部、つまりTシャツからはみ出た部分に出来やすい。

一番汗がたまりやすい所で、ガラス窯の熱にさらされるので、汗がすぐ乾き、塩になるのだ。

さわるとザラザラするのですぐ分かる。

で、塩分補給のため、なめたりするのだが。

けっこうおいしい。

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それからアゴの先も塩を作りやすい。

ふつうアゴは先が下がっているので、汗がたまりやすいし、ヒゲが適当に伸びていると、水分が蒸発しやすくなるので、よく塩ができる。

特に長さが、3,4ミリの時が良いようだ。

また、塩吹き男。と書いたが、これが女、だと変に喜ぶ人がいるかもしれないので気を付けよう。

人間であれば誰にでも暑い時に塩は出来る事なのだが、潮吹き岩を見て大喜びする馬鹿もいるので。

全国いろいろあるが、山口県の竜宮の潮吹き岩が私は特に面白かった。

 

 

 

 

風向さんの展示会も、台風19号スズメバチ君も秋風に吹かれて。

台風19号、通称ヴォンフォンことスズメバチ君も何事もなく、過ぎ去ってくれた。

一時、900hpaまで、気圧が下がり、かなりな被害を覚悟したが、なんち事はなく、東シナ海、海上でまさしく雲散霧消してしまったようで、鹿児島の枕崎に上陸した時、こちらはそよ風ほどの風しか吹かなかった。

むしろ、沖縄あたりにいる時のほうが風が強かったという、変な台風であった。

多分、秋風がだいぶ涼しくなっていたので、秋風を吸い込んで、やる気を無くしたのだろう。

秋というのはそのように、人も台風も、静かにさせるものであろうか。

なんか思いつきで書いてるだけだが。

さて、福岡の風向さんでの展示会も中盤を過ぎました。

風向さんが、いろいろと写真を上げてくださっているので、見てください。

「工藝風向」

出来れば行ったほうがいいですね。

風向さん、ガラスの写真がかなり上手く、現物と、どっちがいいかと尋ねられると返事に窮します。

そのへんを確認する為にも、ぜひ行って下さい。

今回の展示会は、いつの間にか、「静か」さが通奏低音のようになっています。

思えば、生まれて初めてクマ素で展示会をした時、「森永君のガラスは静かなガラスである・・・」と紹介されましたが、本人としてはずいぶん、違和感を感じたものです。

なにせ、作っている時は、目を三角にし、息をゼイゼイゆわせながら、鬼のように作っているのです。

何人とも不用意に近づいたらいかんぞ、オーラを発しながら。

それで、出来たものが静けさを漂わせているとは、本人は大変、気抜けしたものです。

戦いの果ての静かさであるか。

と、納得したのではありますが。

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吹きガラスは化学反応を起こしながら作っているのだ!カリガラスへの挑戦なのだ。

もう彼岸も過ぎたから、これでやっと鹿児島も涼しくなったと余裕で仕事してたら、いやなんか暑くないか?と温度計見たら40度越えてて熱中症になりそうになった。

エムズギャラリーの個展も無事に終わって、少し気が抜けたが、次があるので、やっぱりずっと作っている。

相変わらず炭と薪とガスで焚いているのだが、だんだんコツもわかってきて快調である。

M'sギャラリーのK矢さんが、今回出したコップを触って「ツヤツヤしてますね〜」

とおっしゃっていたが、自分でも「なんか今までと違うなー」と思っていたので、人に気付いてもらえると嬉しい。

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表面にもう一枚、膜があるような、感じがするくらいツヤツヤしており、手触りもなんか柔らかい。

多分これは想像だが、薪を焚いていて、薪に含まれるカリ成分が、ガラスと反応し、表面が釉薬がかかったような状態になっているのではないか、と思う。

ボヘミアガラスが、カリガラスの代表だが、カリガラスというガラスは、ソーダガラスや、鉛ガラスと比べ、融点が高く、キラキラしているのが特徴である。

昔見たことのあるカリガラスに、今回の薪ガラスは似た光り方をするように思う。

1000度を超える温度で、作っているのだから、そのような化学反応が起きていてもおかしくはないと、思うのだが。

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ガラスという、不思議に透明な器が生まれた事の不思議もあるのだが、 今回は、薪と炭を使った吹きガラスを始めてしまった事による、燃焼の不思議の、訳のわからなさがメインの気持ちだ。

KTSさんの取材の補足を書いたが、もう一つ、今回のエムズギャラリーさんの展示会で説明しておきたい事があったのだった。

エムズギャラリーさんの葉書に、

「ガラスの謎に改めてとらわれてしまった。

シルクロードを渡ってきたグラスを、しげしげと眺め続けた人のように、

本当にわからない事だらけになってしまった。」

と書いたが、

ガラスという、不思議に透明な器が生まれた事の不思議もあるのだが、

今回は、薪と炭を使った吹きガラスを始めてしまった事による、燃焼の不思議の、訳のわからなさがメインの気持ちだ。

 

なぜ炭は炭素の固まりなのか、

木が炭素の固まりになる過程で、失われる木質ガスはどれほどのエネルギーなのか、

燃焼の為の空気は入れれば入れるほどいいのか、

それとも空気を入れず、強還元状態のほうが、ガラスはよく焼けるのか、

赤い炎と、白い炎のどっちがガラスの芯まで焼けるのか?

と、いう具合に、ギモンが次から次へと浮かんできて、もうすべてが訳わからなくなってしまった、

と、言う事を今回の葉書では言いたかったのである。

会場にいて、説明できたら良いのだが、今回は窯に火が入っているので、ギャラリーに詰められず、その辺の説明ができないので、ここで説明しておきます。

しかし!

訳が分からないが、確実に判る強みを吹きガラスという仕事はもっている事に気付いた。

吹きガラスの作業をしていて、棹の先のガラスをあぶっている手応えで、窯の状態を感じる事ができるのだ。

「あ、これはもう(ガラスが)柔らかくなってきているな!」

という手応えは、棹を回している力ぐあいで指先が微妙に判断できるのである。

つまり、吹きガラスという仕事は、窯の状態が判断できるゼーゲルコーンを棹の先に常につけている、

という常時、ゼーゲルコーン状態である。という事だ。

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これはつまり、

訳のわからん窯の状態を、

常に判断できるセンサーをもっているという事になる。

これは、すごい事ではないのか?

訳のわからん窯の燃焼状態を指先で判断できる!

という事なのだ。

 

むうー、すごおい事に気付いたのだが眠いのでこのへんで今日は終わり。

 
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カメラの違いは腕の違いか?

DM用の写真を撮るとき、失敗を恐れて何種類かのカメラで撮るのだが、最後にどの写真がいいか、と選ぶと、古いニコンのD200にニッコールレンズをつけた写真を選ぶ事が多い。

露出もピントも全てマニュアルなのだが、写真に何か味がある、のだ。

このカメラとレンズの、控えめな色の表現を見てしまうと、最近のデジカメが、実に上手いこと綺麗に見えるようにデジタル処理をしているのだな、とわかる。

一枚だけ見ると判らないのだが、比べると、あざとく、と言っていい程、綺麗な写真になるように処理されているのがわかる。

次の写真を見て頂ければ、判ると思う。

「まるいち」

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「まるに」

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わかっていただけただろうか?

まるいち。のほうが、最近のデジカメで、まるに。のほうが、古いニコンと、ニッコールレンズの写真である。

まるいち。のほうが全体に、パキッ!と写っているのに比べ、まるに。のほうは、ボケ味があるのがわかる。

特に、ボトルの影の部分を見るとよくわかる。

あんましハッキリしないほうがいい事もあるのだ。

どこもかしこも雨

広島に来ている。

鹿児島も雨だったが、広島も雨である。

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今年は本当に雨が多い。

台風11号がフラフラしていてまだしばらくは、こんな天気が続きそうだ。

 

うっとうしい気分を吹き飛ばすのは、やはりこんなガラスの器が一番である。

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だれが作ったのだろう・・・おや!森永豊だ。

だからどうした、という事で、くだらない宣伝になってしまった。

ネット環境が使えるので、暇つぶしである。

ネットとパソコンがあると、出先でも事務仕事ができて便利だが、暇つぶししてる方が多い気もする。

そうゆう事で、連絡のある方はこちらにお願いします。

炭と薪を焚いて作った吹きガラスはどう違う?

梅雨明けしてから、ものすごく暑い。
今年は冷夏かも、などと言っていたがとんでも無い。

今年もきっちり暑い鹿児島である。

しかも南方で台風10号が発生しているらしく、南からの蒸し暑い熱気が、太平洋高気圧のへりを回って流れ込んでいるたまらん蒸し暑い暑い状態だ。

 

さて、私は明日から仙台市に行ってきます。

もちろん涼みに行く訳ではないが、鹿児島よりは涼しかろうと期待している。

なにせ、ピーチエアと、カプセルホテルという、ミニマムな組み合わせなので、荷物は最小限!なるべく汗をかかずに過ごしたいので、涼しいければ涼しい程よい。

という訳で、ネット関係の荷物も持って行かない事にしたので、行く前に光原社さんに出品する作品をもう少し、紹介しておこうと思う。

 

さて、今回の展示会から、薪と炭をガス併用で焚いた作品を出す訳だが、この薪炭作品には、大きく分けて3つのパターンがある。

 

一番目、これが目で見て最も分かりやすい作品。

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薪の灰を使い、泡ガラスにしたもの。

普通、泡ガラスにするには、重曹を入れるのだが、今回は灰を使ってみた。 重曹だと、均一な泡になって、きれいはきれいだが、面白みがない。

灰の泡だと、ランダムな泡になり、面白いのである。

実は灰で泡ガラスを作るのは以前にもやった事がある。その時は大きめの蓋物を作ったが、あれもなかなか面白かった。
今回はルリ色のゴブレットを作った。

2番め。

吹きガラスに銀箔を使った薪炭作品

こいつは違いがすぐには判らないかも知れないが、銀箔を使ったパターン。
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今までにも銀箔を使った作品を作った事はあるのだが、出来上がりの箔の肌合いがイマイチだった。 
 

ところが今回、薪炭ガラスだと、箔がガラス生地に完全になじみ、しかもピカピカしている。 
 

これは薪と、炭を焚いたことで、炉内が強還元状態になり、銀箔の銀がきれいに析出したのではないだろうか? 
 

こんなにきれいな箔の状態は、私はいままで、(他の方の作品を入れても)見たことがない。 
 

これからの発展が期待できる薪炭作品である。 
 

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3番目 
 

定番作品のシリカ質の変化 
 

最後に、もう光原社さんに送ってしまって、手元にないので、画像をお見せできないが、今までの定番作品が、薪炭で焚く事により、少々、肌合いが変わった点である。 
 

どう変わったかというと、なんかピカピカしているのだ。 
 

これは薪や炭に含まれるカリ成分が、ガラスのシリカ成分と反応し、表面だけがカリガラスのような状態になったのではないか? 
 

まさかそんな馬鹿な事が、と思われるだろうが、ガラス表面のシリカ成分が、水の中のアルカリ成分と反応して、いくらこすっても取れない、「水アカ」が着く事を考えれば、そんなに馬鹿な推測ではない。 
 

いや、そう推測せねば説明がつかぬ程、明らかに前よりピカピカしているのである。 
 

ま、そうゆうことで、あとはご自分の目で確かめていただきたい。 
 

私はヒコーキの関係で、明日は夜に仙台に着。 
 

翌日から、土日の26,27日は在廊予定ですので、ぜひお声をかけて下さい。 
 

それでは。 
 

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吹きガラスの水滴。光原社出品作から

細い注ぎ口のついた、カラカラとか、すいのみ、とか、水滴などをたまに作る。

作らないと作り方を忘れてしまうから、たまには作らないといけない。

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作り方は、本体が吹棹に付いている状態で、熱いガラス種を、注ぎ口にしたい所にペトッとつける。

そして、吹棹に息を吹き込むと、熱いガラス種が、本体の身ごと(熱いガラス種の温度で、本体のガラスもいっしょに熔けて)膨らんでくるので、適当な長さまで延ばし、切りたいところを、火箸やピンサーでつまむとそこから冷めて切れるのである。

手伝いがいたり、付ける種の量が多いなら、種を種棹から切り離してもいいが、この写真のものくらいなら、種棹はつけたままのほうが、素早く作業できる。

つける種の温度を利用して、本体のガラスを熔かすのだから、早く息を入れないと、硬くなって、上手いこと膨らまない。

こうゆう熱燗用のカラカラとか、またはポッペンなどは、昔のガラス職人は昼休みにひょひょいと作り、子供のみやげとかにしていたらしい。徐冷もしない。

薄手に作るし、温度を見極めてちょいと水につける事で強化ガラスのようにしていた、とのことだ。

この話は、昔の大阪のガラス工場で、働いていた師匠から聞いた。

昭和30年代頃、この頃はガラスで作れるものはまだ、ほとんど職人が吹いて作っていたとの事。
ブラウン管とか、電球の玉とかもである。

今なら機械で作るものも全部職人が作っていた訳で、その頃の職人の腕は相当なものだったのだろう。
毎日いろんな製品をA品として作っていたのだから、カラカラや、ポッペンを昼休みに軽く作れたのもガラスに対する慣れが全然違ったのだろう。

私もポッペンを作ってみたが、半日やって、きれいな音がペッポンと鳴るのは2,3個しか出来なかった。

コツがあるのである。

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吹きガラスでの失透生地はこんな感じ。

(仙台光原社、出品作品より。)

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吹きガラス、というかガラス全般であるが、「失透」という、やっかいな状態の生地になることがある。

これは、ガラス生地が、ある条件下に置かれた時、結晶、もしくは結晶核を生じ、結果、ガラスの透明感が失われ、つや消し状態や、つぶつぶ状態になってしまう事を言う。

焼き物で言うと、失透釉、マット釉、の感じで、なかなか悪くないのだが、この生地になってしまうと、固くて作りにくいは、結晶核化が進むと、溶けきれなかったコムギ粉のダマみたいになって、そこからヒビ割れるはで、進んで仕事したくなるような生地ではない。

 

私の窯では、温度が作業温度に上がりきれないと、なる事があり、その時はしょうがなしに作ったりする。

しかし、とにかく歩留まりが悪すぎ、進んでしたい仕事ではない。

だが、なんとか取れたものは、なかなか味があって、良いのである。

特に、水を入れると、霜がついたようでなかなか綺麗だ。

失透、英語で言うとデビトリフィケーション、

覚えておいてもあんまり役に立たないけど、こんなガラス生地もあるという事で。

 

 

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