ガラス炉(吹きガラスの窯)にカーボンというか、ススがたまり、どうしようもなくなってしまったが、ブロアーを買って何とか復帰したというお話。
ここ一週間程、うちの吹きガラスの炉の煙道にススがたまり、これはもう再起不能ではないか、と思われるほど重篤な事態になってしまった。
事の起こりは、バーナーの灯油ホースに、ごくわずかだが、油染みが見られ、どうもホースが劣化してヒビが入り、そこから灯油が染み出してるようだ、と、発見してしまった朝に始まる。
このまま作業に入っても、問題無い程度のごく薄いにじみだったが、次の日朝早くから広島に行く予定で、窯を監視できないし、もう7、8年経っているホースだから、この際、新品に取り替えた方が、無難だろう、と判断した。
で、灯油バーナーを、臨時用の小さなガスバーナーに入れ替え、灯油ホースを外し、油圧ホースの専門店に持って行き(ユンボとかの油圧機械のホースを修理する業者)、同じ長さの新品を作ってもらう。(9,800円)
そして、無事付け替えたのだが、次の朝起きてみると、何と!バーナー口が、ほぼススで埋まりかけているではないか!
「これは完全にやばい」
どうも推察するに、ホースが新品になって、流れが良くなったせいで、思ったより油が出ており、不完全燃焼になってしまったらしい。
とりあえず、見える範囲のススを細い鉄棒で、突き崩し、エアーを最大に開け、ススを飛ばそうとするが、どうやら炉内にかなりの量のスス、カーボンが溜まっているらしく、全然燃えてくれない。
バーナー口で、ショボショボと、燃えるだけで、炉内に火が入って行かないのだ。
「さて、緊急停止するかね」
いや、仮に停止して、炉内を掃除したところで、私の炉は、煙道を炉底に通し、その上に、二次空気を温める道を作って、灯油を完全燃焼させる想定で作ってあり、煙道にススが付くことはありえない、という構造で作ったので、煙道掃除口からは、ごく一部しか掃除できない。つまり、これは想定外の事態なのだ。
掃除するなら、炉底まで崩して作り直すしかないのだ。
ではもう、炉内の温度を何とかして上げて、中のスス、カーボンを焼き切り、飛ばし散らすしかないのだ。
さて、それから約3日間、なだめたり、すかしたり、持っているACファンや、シロッコファンから、エアをあっちから、こっちから送ってなんとか炉内の温度を上げようとするものの、どうも、どっかが詰まっているらしく、症状は一進一退。というか、0進0退。つまり、にっちもさっちもいかん。
「さ^て困ったね」
どうするよ。もう止めるしか無いか。
「あ?」
「あ!」
そうだ!ブロアーがあった!
あれだ、あれ、田舎のバーベキューでは、炭熾しに絶大な威力を発揮し、あるいは、たまった落ち葉を吹き飛ばして、たちまち道を綺麗にしてしまう、ブオーンとうるさいあいつだ。
よし、買おう。
うへへ。
こんな非常事態にもかかわらず、わたしはニヤリとした。
この非常事態にかこつけて、ついにあこがれのあれを我が手中にできる格好の言い訳が申し分ないではないか。
へっへ。
とほほを緩めつつ、近所のホームセンターへ。
買った。しょうがないから買ったのだ。
そして、こいつの先端に「ウコンの力」のアルミカンをしばりつけ、耐熱仕様にし、(台無しだ)
吹いた、吹きまくった。
バーナー口から、煙道出口から、二次空気導入口から。ありとあらゆる入り口から、ブオン、ブオンと、吹き付け、吹き込み、吹き飛ばした。
時にはバーナーの油量を最大に上げ、まるで烈火の火炎放射器の如く。
ときには、煙道口から、糸を通すように火の道を拡げるべく。
一日、ブロアーの舞い上げるホコリと、ガラス炉の熱に汗まみれ、ホコリまみれになりながら。
結果。
見事に復調した!
前より調子が良いかもしれないくらいだ。