「機」というものは、熟する時を待っているかのようだ。
そして何かのきっかけで実現する。
薪を焚いて吹きガラスをやるなんて、冗談話で笑うレベルで、実現させようなどとは全然思っていなかった。
アフガニスタンのヘラートという町で、ターバンを巻いた痩せた髭親父が、
短い棒の先にガラスを巻き取り、吹きガラスのような事をしていて....
その横で、女の子が、薪を窯にくべている...のを、NHKのテレビで見たおぼろげな記憶や、
私の好きなレーマー杯が、森を一山潰して作られたほど、貴重なガラス製品だった事など、
知識としては、薪で吹きガラスをやってやれん事もないだろう、
ただし、膨大な手間がかかる・・・
一人じゃムリ。
と、思っていた。
だが何だか今年から、薪を焚く機会がやたらと増えた。
借りている山の家での、煮炊き、風呂、暖房はすべて薪である。
なので薪がいくらあっても足りない。
そこで、ロケットストーブという、新しい概念を導入し、薪の節約につとめてきた。
ところがもう一つ、ロケットストーブと裏表の兄弟のように、ウッドガスストーブ(TLUDストーブ)という、燃やし方が出てきた。
これはまあ、要するに、日本古来の炭窯や、もみがらを利用した、ぬくかど、などの伝統技術を新しい言葉に置き換えて、新しい器具を使って、木質バイオマスを利用しようという事なのだが、これまた面白い燃焼をするのである。
ロケットストーブは、うまく燃やすと、きれいに完全燃焼し、ススの付かない「煤切れ」の温度、400度以上だろう。
まで排煙の温度を上げて、燃やす事が出来た。
そして反面、友人がアマゾンで買ったウッドガスストーブは、炎好きの人間なら、飛びつく魔法の言葉「二次燃焼」を、デイパックに入る程の小さなサイズで軽々とやって、ひとつかみの杉っ葉で、10分もかからずお湯を沸かし、美味しいコーヒーを淹れてくれた。
そのような、薪割りが日課、という生活に突入しつつあった頃、
いつもの散歩道に行ってみると。
くすの木の大木が切り倒されていた。
そしてその下には、大量の木質バイオマスが・・・
ま。要するにバイオマスとカッコつけんでも、大量の葉っぱと、枝と、幹、
なんだが。
山の家の薪調達が最優先事項だった私は、
すぐに、
「これ、もらってもいいですか!?」
と、木を切っていたおじさんに聞いた。
「おーいいよー。遠慮はいらんから全部もってって!」
やった!大量の木質ばいおます、ゲット!
と、喜んだが、
量がハンパない。
多分、二冬分くらいは十分に暖まる薪の量だと思う。
割っても、割っても、まだまだある。
しかし、ほぼ生木なので、今はまだ燃やせない。
ストーブや囲炉裏で燃やすのには、まだまだ乾燥させないとダメだ。
だけど、炭窯に入れて炭にしてしまったり、ウッドガスを抽出するのなら、生でも問題ない。
えーい、そんなら、ガラス窯に入れてしまえ!
と、ガラス窯で、薪を焚き始めた。
ま、つまりこれが、
"薪と炭で吹きガラスをやる"
きっかけになったのである。
トリガー「引き金」は、熟する時を待っていたのだ。