ロケットストーブに二次空気が必要か?
という問は、ロケットストーブ、特にマスヒータ型のロケットストーブを作った人は考えてしまうのではないだろうか?
二次空気を使った燃焼は要するに、発生した煙にもう一回、空気を送り込むことで、煙の出ないクリーンな燃焼をさせたいということだ。そのため、ストーブの炉壁内に空気道を作り、ストーブの熱で暖めた空気を送る構造の薪ストーブもある。
二次空気燃焼と聞くと、ストーブマニアは、まるで荒野に飛び出す青年のように、わざわざ複雑な空気道を苦労をいとわず作り、一人でにやにやしているものだが、さて、ロケットストーブの場合の二次空気はどうなんだろう?と、実はわたしもちょっと実験してみたりしてた。
きっかけは、山の家の囲炉裏内に、耐火断熱煉瓦を組んで、ロケット囲炉裏にした時かもしれない。
オープン囲炉裏状態の時は煙が部屋に充満し、目がシパシパして痛かったのがロケット囲炉裏にしたら、煙が少なくなり、窓を開け放って換気する必要もなくなったのだ。
もっとも焚く薪の量がかなり減ったのも一因だろうが、ロケット囲炉裏の強力な空気吸い込み力と高温燃焼のおかげで、煙が少なくなったのは間違いない。
そこでこれならもしかして二次空気を入れたら、完全に煙をなくす事ができるんじゃないか、と期待した訳だ。
しかしながら、私のちょっとの実験の結果だが、今のところ大きな変化はない。というところだ。
これはまだ、いろいろやってみないと何とも言えないが。
さて、ところでこのロケットストーブの二次空気について調べていたら、面白い記事があったので、紹介しておきたい。
ロケットストーブの前身にロレイナストーブというものがあったらしいが、それはアフリカなどの、薪が主燃料の国での、深刻な薪問題を減らす為に生まれたらしい。
室内で煙突なしで調理する事で、肺炎や、慢性呼吸器疾患になったり、燃料を節約するため、料理を生煮えのまま食して健康を損ねたり、さらにはウガンダの紛争地帯では、薪拾いに行って殺されたり、レイプされたりなどと、木が捨てるほどある日本にいては想像もできない薪問題というのが、世界にはあるのだと初めて知った。
そこで、国連がアプロヴェチョ研究センターという非営利組織に依頼して、出来上がったのが、ロレイナストーブというものらしい。
ところがこのロレイナストーブ、版築構造(ブータンの家屋の土作りの一階部分がかっこいいですね)で作ったため、熱を断熱せず、蓄熱してしまい、火の扱いに習熟した人が焚くと、今までのオープンなかまどの方が、薪が少なくてすんだという事に。
そこで、粘土におがくずを混ぜて断熱したりして、アプロヴェチョ研究センターの技術責任者、ラリー・ウィニアルスキ氏が開発したのがロケットストーブであるというのだ。
ロケットストーブにそのような深刻な過去があったとは、まったく初耳である。
興味のある方はウィキペディアを参照していただきたい。
さて、そのアプロヴェチョつながりで、ロケットストーブの二次空気について当のラリー・ウィニアルスキ氏が言及している文章があったので、引用しておきたい。
”ロケットストーブについて考えるに興味深い点を指摘しておきたい。二次空気は、いらない。
私は、暖められた二次空気を、ヒートライザー上部に入れる試みをやったが、煙の量や燃焼効率に顕著な改善は見られなかった。いずれにせよ、十分な量の一次空気が、燃焼ゾーンのトップにまで残っているのだ。
ここに空気を入れると温度をかえって下げるようである。将来的にはもっと良い機器を使ってテストしたいが。ロケットストーブは、適正な量の燃料が入れられた時、理想的な一次燃焼のために実に上手く働く補助的な状況を作り出そうとする。
断熱された煙突が生み出す、増幅された引きは、炎に扇風機のようにたくさんの空気を送り込み、より熱く、力強い燃焼を生む。”
Larry Winiarski's Rocket Stove Principles
Dean Still, April 2002 より、引用。
このあと、ロケットストーブの原則(10項目)という、また興味深い文が続くが、これについては、今後も考察していくであろうから、またの機会に。
追記 先ほどのアプロヴェチョのウィキペディアに、訳文はのっていた。