もう12月なのでちょっとシーズン遅れだが、自宅ロケットストーブの煙突掃除をした時に、ロケットストーブの煙突や、煙道火災について今まで気になっていた疑問が自分なりにわかってきたのでまとめておきたい。
自宅の薪ストーブは、新保製作所さんの、キャンプ用薪ストーブ「ヒートチョッパー」を改造し、廃ルツボを切って煙道にしたものをつなげてある。
そして更に排熱で部屋を暖めるため、上部と横に排熱缶を増設してある。
この状態で昨シーズン3月か4月頃まで焚いたのだが、最後の頃は、だいぶ煙が漏れてきて、こりゃ煙突掃除せんといかんな。と思いつつ、そのうち暖かくなったので、そのまま放置。
なので、今シーズンを迎えるにあたり、どうしても煙突掃除をせねばならぬ。
さあて、腰を入れて煙突掃除しようか、と思ったが、どうせメンドクサイ仕事だから、いっそばらしてオーブン付きロケットストーブに改造してしまう事にした。
どんどんバラして薪ストーブ本体と外部に行く煙突だけにする。
周りの断熱壁と、フレームなどはそのまま残す。
バラして見ると思ったよりけっこうススやタールが付いている。一応ロケットストーブ方式だから、少ないと思っていたが甘かった。
特に煙突(ステンレスの一重煙突)内のタールがけっこうすごい。
放熱缶から金属の煙突にかけて内壁にびっしりとタールが付着している。
しかもまるで黒曜石のように硬く、ブラシなどではとても落とせない。
とりあえず届く範囲を無理やり、スクレーパーで掻き落とす。
手が届かない所はいかんともしがたいが、それでもごっそり採れた。
しかしこんなに硬いタールが付着しては煙突掃除も容易ではない。下手すると毎シーズンごとに煙突を交換せねばならんか。と、絶望感におそわれる。
「やはりロケットストーブ方式の薪ストーブというのはけっこう掃除がやっかいなのか・・・」
しばらくボーゼンと座り込んでしまったが、気を取り直し、煙道内のタールを焼き切ってしまう作戦で行こう!と決める。
これは北海道のガラス工房の人が、煙突が詰まって燃えが悪くなった時、窯の温度をムリヤリ上げてススを焼き切ってやったぜ。
怖かったけどな。
と言っていたのを思い出したからだ。
いわば強制的に煙道火災を起こしてしまおう、という危険な作戦だが、煙突を外して外でやればよかろう。
で、タールがこびりついて固着した煙突をなんとか外し、ステン缶で焚き火を熾した中に煙突を突っ込む。
すぐに煙突内のタールに引火し、煙突から激しく火が吹き出す、かと思いきや、くすぶって臭い煙が出るばかりで引火しないではないか。
えっ、タールってすぐ燃えるんじゃないの?と先ほどフライパンに集めたタールを、トーチバーナーであぶってみたが、ブスブスと溶けてジュルジュルと煙は出すもののいっこうに引火はしないではないか。
なんだ、タールって簡単に燃えるもんじゃなかったのだ、じゃあ煙道火災ってよほど掃除してないか、悪条件が重ならないと、起きるものではないんだな、と、変な所で安心する。
しかも、このタールがくすぶる時の煙の匂いがひどく臭い。
どっかの古い駅の灰皿に山盛りたまった吸い殻が、くすぶっているような悪臭である。
成る程、このタールをそのまま排気する作りの薪ストーブだと、近所から苦情が来てしまったりする訳か、と、また、変な所で納得する。
ま、納得したのはいいのだが、タールを焼き尽くさない事には肝心の煙突掃除が終わらない。
この時納得し、安心した煙道火災や、ロケットストーブの排気についての感触は最後にまとめて書くことにして、とりあえず今は煙突掃除。
結局煙突の中に、割った竹やら、細枝を入れて煙突内で強制的に焚火し、タールを焼き尽くす事ができた。
キレイに焼き色がついた。
さてさて、次はエルボ部分の掃除。
これまたこびりついてスクレーパーでガリガリやっても落ちるものではない、しかもジャバラ状になってるし。
どうしようか。
あ、そうだ。さっきバーナーであぶったら融けだしたな、と言う事は意外と熱に弱いんじゃ?
と、お湯をかけてみると!
見事にぺろりとむけた。
なんと!いままでの苦労は何だったのだ。
「タールはお湯をかけるとはがれる」
のです。
ふう、やれやれだ。
ここで5分間休憩。お茶にしましょう。
(2018年10月23日 追記。 この時はお湯をかけたらきれいに取れたが、今シーズンやはり、タールがついた煙突にお湯をかけたが、なかなか取れなかった。
この記事を書いた(2015年)時は、ストーブに近い部分にタールが付着し、今期(2018年)は、外の煙突出口に付着した。
オーブンや、スス取りフィルターをこの時取り付けた事で、その後タールの付着する場所が変わってしまい、しかもタールの性質まで変わってしまったようだ。
タール掃除にこの記事を参考にされた方、ご注意ください。)
さて、どうしてこんなに煙突内にタールが付いたのか?
その原因を考えつつ、煙道火災や、ロケットストーブの煙突掃除についてもここでまとめておこう。
実は、こんなに溜まるとは予想してなかった。
ほら、こんなに。
ここは耐火レンガで作った横煙道から、天井へのステン煙突へのつなぎの部分である。
で、ここをよく観察してみると、耐火レンガ部分にはあまりタールは付いておらず、ステン煙突になった境目のあたりから、タールが付着しだしているのだ。
そして、そこから2メートルほどの所が一番タールが付着している。
そこから外の出口部分にかけては、ほとんど付着していない。タールの付着も途中で力尽きた、という形だ。
では、どうしてステンの金属部分になった所から急にタールが付着しだしたのか?
それを考えると、原因が推測出来てきた。
タールの元は煙である。煙が煙道内を通過していく時にススやタールの形で、煙道内部に付着していく。
しかしこの時、煙の温度が十分高ければ煙はスピードをもって外まで排気されていく。
しかし、今回の私のような放熱部を室内に設けて、排熱を放出させてから排気が煙突を通る構造だと、排気はかなり温度が下がった状態で煙突に行く。
煙突に1,2秒は手を当てていられたから、おそらく温度は7〜80度ぐらいだった筈だ。
そして、その排気煙には、まだ乾燥しきれていなかった薪の水分や、室内から空気とともに取り込んだ水蒸気が含まれており、燃焼を終え、断熱、保温の効いた耐火レンガ部を通過し、一重のステン煙突部に行った時、急に冷まされ、いわば結露のような具合で、煙道内部にタールとなって付着したのであろう。
そして、その後、水分は熱で蒸発して、水蒸気となり煙突トップから排出され、付着したタールは乾燥してとどまり、その後次々と新しい層を形成していったのだろう。
それにしてもシーズン終わりに、よく乾いていない薪を焚いたのはいけなかった。
そういえば、その頃は、かなり引きが悪くなって、煙が室内に返って来てたな。もう少しで暖かくなるから、と結局煙突掃除もしなかったし。
ロケットマスヒーター型のロケットストーブの排気煙は、室内に排熱を放出するため温度が低い。
外の煙突は手をずっと当てていられる程なので、3〜40度くらいだろう。
そして、煙突先端からは煙というより、ほぼ湯気が出て、木酢液が滴っている。
従ってロケットマスヒーター型のロケットストーブを設置する時は、木酢液が垂れる所は下がり勾配に煙突をつけ、木酢液が外に流れ出るようにし、煙突の金属部分で温度が下がり内部に結露して、タールが付着しそうな所は掃除しやすく、もしくは取り外ししやすくしておくべきだろう。
また、ベンチ内を煙道にする場合は、まだ排煙の温度がそう低くなく、また土などの断熱体を使うだろうから、結露の心配はないだろうが、ススはつくだろうから、やはりここも掃除口を設けるなり、あまり狭くならないように施工すべきだと思う。
最後に、煙道火災について感じた事を書いておきたい。
私の近所のお宅にやはり薪ストーブを設置されている方がおられて、その人が薪ストーブについて語る時、必ずどこかのお寺さんで煙道火災が起きて、お寺が丸焼けになったお話をされるので、煙道火災という言葉には少なからず恐怖心を感じていた。
だが、今回採取したタールを焚いてみて、すごく臭い煙が出るばかりで簡単に着火するものではない、という事が分かったので、安心した。
今は、煙道火災は、かなりの悪条件が重ならないと起きないのではないか?と感じている。
その悪条件とは。
- かなりの量のタールがたまる事。
- そのタールが垂れてきて液状になり、発火点に近い温度付近の場所に溜まってしまう煙突の作りになっている事。
- そしてそのタールが高温で気化し始め、悪臭を放つ煙が出だしても、気付く人が近くにいない事。もしくは気付かない所に煙突の出口がある事
逆に言えばこの条件が重なれば煙道火災を起こせる訳で、それもけっこう大変なのではないか?
第一、これほど煙突が詰まってきたら、かなり引きが悪く、煙も逆流してくる筈で、ちょっとおかしいな、と感じる筈である。
そしてロケットストーブで煙道火災が発生しやしないか?と恐れていたが、それも杞憂であろう。
なぜならロケットマスヒーター型の煙道は、とてもタールが燃える程の高温にはならないだろうし、その前におそらく、詰まったススやタールのせいで、引きが悪くなり、全然燃えなくなってしまって、煙突掃除をやむなくし始めるだろうから。
失礼ですが、参考になればとこちらの状況をお伝えします。
以前ホンマの時計型ストーブを使っていましたが、針葉樹を薪にしているせいもあり、年に3回煙突掃除が必要でした。
ロケットストーブを自作し、3年たちましたが煙突掃除は全く不要です。
因みに、煙突は壁から出したままでその先の煙突は撤去しました。
壁から出る部分の温度は30度前後です。
ヒートライザーを徹底的に断熱して燃焼効率を上げているのが功を奏しているのだと思います。
コメントありがとうございます。
煙突掃除が不要とはうらやましいですね。
多分、排気の温度と、スピードが私のストーブよりも高く、早いのだと思います。
断熱が良いのと、余分な煙突を撤去されたのも功を奏しているのでしょうね。
ホンマさんの時計型ストーブは、私も知人宅で、体験した事がありますが、
ストーブ排気出口すぐのエルボが真っ赤になるほど熱くなり、ここからの熱で、かなり部屋を暖めているんだな、
と感じました。
ストーブ出口すぐの放熱が高いぶん、あとの部分は急に温度が低くなり、排気のスピードも遅くなって、
煙突にススや灰が溜まりやすくなるのだと思います。
反面、立ち上がりが早い、(エルボ部分がすぐ熱くなる。)ので、私の、この部分を耐火断熱レンガにしているストーブよりも、
すぐに部屋があったまるように感じました。
煙突の状態も、ホントにいろいろとあるのですね。
昔の煙突掃除屋さんは、「煙突を掃除すればばその家のストーブがわかる」なんて言ってたかも知れません。