できることならば山の中に小屋を建て、一人でこもっているのが私の夢だ。
ひょんな事から田舎に家を借りることになり、夢に近づいたので近頃いろいろ忙しい。
借りることができたのは良いが、まあとにかくボロボロである。
なにせ家主さんが、「そのまま朽ち果てさせるつもりだった。」
とおっしゃるとおり、四方から朽ち果て、荒廃が押し寄せてきている家なので、それを押し返そうと私は近頃大工であり、左官であり、肉体労働者である。
南九州の田舎の放置された家屋は必ずあちこちシロアリの巣になっており、ボロボロに崩れた敷居や束柱を取り替える大工仕事がまず第一。
次に田舎の家は当然、汲み取りトイレなので、それを取り壊し、モルタルで埋め、コンポストトイレに変える左官仕事が第二。
そして来る冬に備え、倒木を集め、薪を作る肉体作業。
とにかく忙しい。
しかしながら私は一人でこもっているのではない。
腐った敷居や束柱を取り替えて、なんとか住める状態にするのには、集落の人たちや、子供の友達の父、母が手伝ったり、資材を提供してくれた。
コンポストトイレの制作は、友達の大工さんが、古い汲み取りトイレをぶっ壊し始めてくれなくては、一人ではなかなか進まなかっただろう。
薪を集めるのにも、集落の人たちからの薪情報のおかげでどんどん集まったのである。
思うにむしろ東京とかで一人暮らししたほうが、よっぽど山ごもりに近いと思う。
自分を見つめるには山ごもりしないと、できない、と思うことは間違いだとムーミンのミィも言ってたな。
以下、ミィのセリフ引用。
「逆よ、全く逆よ。自分と向き合うにはひとりになるんじゃないわ。いろんな人と関わりあうのよ。お友達とおままごとしろって言っているんじゃないの。自分の知らない、自分を知らない人たちと関わりあうのよ。見えてくるわよ、本当の自分が」
でもやっぱり、雨降りの日、一人静かな山の中にいるのはいい。
ここで一句。
独居山 手洟かみ 雨音激し