炭火吹きガラス炉は、今日も快調である。
今日は久しぶりにこのコップを作る。
いつの間にか定番コップになってうれしい。
難しいけど、作るのが面白いコップである。
さて、炭火の遠赤外線効果が、吹きガラス製作でどうして優位になるのか?
と、書こうと思い、炭火のことをパソコンで調べていたら、なにかの質問箱に、
「兄が、ガラス作家になろうとしていますが、どうしたらいいのでしょうか?
ガラス作家は食べていけるのですか?」
みたいな趣旨の質問があって、つい、釘付けに見てしまった。
ガラス作家は食べていけるのですか?
食べて行けません!
と、即座に回答しようと思ったが、ま、落ち着いて人々の回答を見てみると。
けっこうな数の回答があり、おおむね9割が、「やめた方がいいです」
と、ごくまっとうな意見であった。
で、残り、1割、が「本人の好きにさせて行ける所まで行かせてしまえ。やりたいのならやってしまえば、結果はどうでも良いではないか」
というもので、なるほど、これが正解であるかな、と思い直した。
よく考えてみたら、自分も、そうゆう人間の一人だった訳だし、吹きガラス作家になる為に、修行したり、勉強したり、専門の道具を少しずつ買い揃えていたりしている人間に、何を言っても無駄ではないか、ということなのだ。
ま、しかし、私は独立したい!という人に、ことごとく、「やめた方がいい。」
と言ってきたイヤミなおじさんなのだが。
いや、私とて、「ぜひ、そうしなさい!楽しいよー!一緒に展示会やろうね。」
と言えたらどんなに良いか。
だが今はとにかく燃料代が高すぎる。
前の記事でも書いたが、月20万の燃料代を叩き出す事は、生活のサイフが一緒になっている個人作家には痛すぎるのである。
言い訳になるけど、今は静かな異常事態です。
実は今回、吹きガラスの窯を、薪で焚いてみたり、炭火を使ってみたりしているのは、燃料の事を改めて、考えてみたいからである。
そして、私は新しく吹きガラスをやろうとしている人達に、ぜひ、やってみて下さい!
と言えるようになりたい、と思っている。
ちょっと長くなるが、そこのところをちょっとこの際だから言っておきたい。
吹きガラス作家にこれからなろうとしている人達へ。
ここのところ、薪と炭を使って、吹きガラスの窯を焚く方法を模索しているのだが、実はまだ、「結局のところ、ガス代や灯油代がいくら安くなったのか?」
という、肝心なところは書いていない。
窯に詰める薪の量にもよるし、作るものの大きさによっても、燃料消費量は違ってくるから、もう少し、データーをとらないと、本当のところがまだわからないからだ。
“薪と炭を使って吹きガラス” つまりこうゆうことだ。
だが実は結論から言うと、確実に節約出来ているのは確かだ。
作る物にもよるが、作業炉で、一日、3分の1から、半分のガス代は節約できているだろう。
しかしながら、
これは節約でやっているのではない!のである。
言うなれば、
「自分の汗が確実に仕事と結びつく。」
その手応えの為にやっている、と言った方が良い。
「金の話をすると野暮になる。」のである。
一日ガス代が、3分の2や、半分になったとて、お金に換算すれば何ほどのものでもない、せいぜい千円になるかならんかといったところだろう。
薪を切ったり、割ったりする手間を考えると、比較の対象にもならない。
では、なぜ?
金ではないのだ。
なぜ、自分が吹きガラス作家になろうとしたか思い出してみるがいい。
なんどでも言うが、金ではない。
この訳のわからん世の中で、自分の居場所を見つけるため、訳もわからず走っていた結果、こうなった。
のだ。
思えば。
当たり前のように入った学校では、当たり前のようにテストされ、何の役にも立たない数字を詰め込まれ、すべて点数がすべてで、一番以外は、いわれのない劣等感を埋め込まれ続け。
社会に出たら、社長にこき使われ、夜遅くまで縛り付けられ、腹をすかせてでも早く残業をすまそうとしたら、夜食をとられ、もらったお金を見れば、隣のやつに完全に負けてて、やっぱり、劣等感とつきあわされ。
そして、ガラス作家になってみれば、燃料代をかせぐため、やっぱり金が要り、気付いてみれば、町で一番灯油を注文する人間で、エネルギー業界のヘビーエンドユーザーで、かっこ悪く言えば、売人から見れば要はネギしょったカモで。
それでもがんばってデパートで展示会をやれば、今日の売上はいくらで、目標まであといくらで、ああ、そういえばあの作家さんはいくらだったかしら、と、やっぱりお金が顔になり。
思えば。
なんの為に作家になったのだろう?
だから、この際だから言っておきます。
これから、吹きガラス作家になろうとしている人達へ。
ぜひおやんなさい。
あなたがあなたであるために。
でも、その為には、いままでの、常識や、習い覚えて来たことに、とらわれたままではいけません。
なぜならば、これからの時代は大きく変わるからです。
昭和の景気の良い時代に、形作られた窯のノウハウや、エネルギーの使い方ではこれからはやっていけません。
新しいやり方が必ずあるはずです。
まず、しじゅうガラス炉を焚くといった、無駄なやり方は変えるべきです。
寝ている間も金が燃えていく、風邪で休むのにも金がいる。
新しい焚き方にするのはむずかしいかも知れませんが、もう今のやり方で、個人作家はやっていけません。
いっしょに考えて行きましょう。
ガスや、石油や、電気の元締めに振り回されるだけの、「末端」では潰されるだけです。
何より、あなたが流した汗は、貴方のためにあるべきです。